[29]『1973年のピンボール』 (村上 春樹/講談社文庫) 2007/3/25 [読書]
近年の村上作品が、過去を懐かしむような、または若い世代を遠くから眺めたような味があるのに対して、青春三部作の一つとも呼ばれるこの作品は、まさにリアルタイムの青春を描いている作品と言える。変わりゆくものへの哀しみ、将来に対しての漠然とした不安、些細なことにも喜びを見出す幸せ。そんな喜怒哀楽の浮沈の激しさが、非常に生々しくリアルに感じ取ることが出来る。
文章自体は、氏の2作目ということもあって、荒削りな印象が否めない。ただ題材が題材だけに、それが青春の青臭さのようなものを引き立てている。そして青臭い自分に語りかけるように言う。『ゆっくり歩け、水をたくさん飲め。』と。
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