[22]『アフターダーク』(村上春樹/講談社) 2006/2/18 [読書]
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「僕の人生のモットーだ。ゆっくり歩け、たくさん水を飲め」
〜P203より
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3分の2程読み終えたところで、「残りのこの薄さでは、絶対『え?もう終わり?』と思うな」と予期しつつ読んでいたが、読後には思った程その感想を持つことは無かった。確かに物語としての完結感は、村上春樹氏の作品にしては、極端に薄い。しかしこれこそが、この作品の作風とも言える。
村上春樹氏の作品に見られる"ファンタジー感"は、この作品にはほとんど登場しない。いくつかのコンプレックスや、特殊な事情を抱えつつも、逞しく社会を生き抜く等身大の青年が出てくる・・・そんな設定はいつもの作風と変わりは無い。しかし、この作品には、まるで今まさにこの世界のどこかで起こっているドラマの一部分を切り出したかのような、そんな"身近感"が漂う。
一瞬感じる読後の物足りなさは、あたかもそのまままた新たな明日(現実世界)が始まるんだということを、宣言され、背中を押されるような気分になる。そして村上春樹氏は、言いたいのだと思った。「ゆっくり歩け、たくさん水を飲め」と。
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