[19]『海辺のカフカ』 (村上 春樹/新潮社) 2005/3/20 [読書]
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すべての物体は移動の途中にあるんだ。地球も時間も概念も、愛も生命も信念も、正義も悪も、すべてのものごとは液状的で過渡的なものだ。
〜下巻 P102より
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過去自分が読んだ村上春樹作品の中で、最も文学的であると感じた。今までの作品が、「ファンタジーの中に見られる現実感」想像させるものだったとすれば、この『海辺のカフカ』は、「現実の中のファンタジー感」を想像させる。その点においてこの作品は、とても暗示的であるし、読み手がこの世界に自分との互換性を見つけることができるのではないか。
いつも村上作品を読むたびに感じていた、”冒頭の読みづらさ”はこの作品には無い。冒頭から、ドラマチックな展開が小気味よいリズムで繰り広げられる。あまり難解さは感じない代わりに、ちょっと薄味な印象も否めないが、決して底が浅いわけではない。過去の様々な作品のテイストもちりばめられており、入門書としてもお勧め出来る一冊。
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