[18]『陰摩羅鬼の瑕』 (京極 夏彦/講談社ノベルズ) 2004/10/17 [読書]
ここまでの京極作品とは、ひと味違う作品。『姑獲鳥』から『塗仏』までは、その思考や世界観についていくのが精一杯で、最後に京極堂の語りによってすべてが明らかになった時に、新しい世界が開けたような爽快感が待っていた。
しかし、これは違う。ここまで京極作品を読み続けたからか、はたまたテーマが自分の深く考えることの一つだったからなのかもしれないが、第1章を読み終えた段階で犯人が分かってしまった。いや、犯人だけでなくあらかたのストーリーが読めてしまった。あとは、その物語を確立する為の論理が展開されるだけである。
この物語で語られるテーマは、とても深い——はずである。自分は以前、何度となくこのテーマについて考え、悩み、中途半端ながらもその答えを出している。だから、この展開についていくのは容易だったし、下手にミステリ要素を絡ませた分、京極作品で初めて、”物足りなさ”を感じてしまった。
今思うのは、これを京極作品で初めて読んだ人がどう思うかということ。それでやっぱり、自分が『姑獲鳥』から『塗仏』までで感じていたことをその人が感じるのであれば、自分も少しは京極の世界に慣れてきたのかな、と思う。
まぁ次の作品でその答えは出るのかもしれないが。
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