[17]『ここに地終わり 海始まる』 (宮本 輝/講談社文庫) 2002/9/6
とても純粋なストーリーだった。物語的にはあまり抑揚はなく、どちらかというと各登場人物の心理描写がメインとなる。宮本輝の作品を読んだのは初めてだが、その淡々とした描き方は、三浦綾子の書き方に近いような印象も受けた。
18年間の療養生活を送った少女の社会復帰・・・という、序盤強調されている話は、実はあまりこの作品全体の骨格とはならない。梶井克也と天野志穂子をメインに据えた、大げさな言い方をすれば人間再生の話が主題だ。最後の終わり方がとても良い。女性の描き方が特徴的であると言われて読んでみた作品だが、なるほど天野志穂子という登場人物は、不思議な魅力に溢れている。登場人物がとてもリアルなので、身近に気軽に楽しめる作品と言える。
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