[34]『容疑者Xの献身』 (東野 圭吾/文藝春秋) 2007/11/3
以前から数学は苦手な方だったが、社会人生活が長くなるにつれ、もっと数学を学びたいと思うようになっている。それは何かを成し遂げようと考えた時に、現状を分析し、それに影響を与える要素を検出し、検討しつつプランを作り上げていく様が、数学の数式を組み立てていく様に似ていることが、何となく分かったからだと思う。それは、『博士が愛した数式』を読んだのがきっかけだった。
そして本作は、またもやその数学を軸に組み立てられた物語。この物語を読んでいると、遍く学問は、アプローチが違うだけであって目指しているところは同じなのではないかと感じる。結局は人間が組み立てている学問であって、人間か自分たちのことを知る為に学問は存在するのだろう。そのくらい、物語中の数学は自分が想像している数学とはかけ離れたものだった。
東野圭吾氏の作品は、近年記憶に新しいところでは、殺人者と家族のその後を描いた『手紙』など、斬新な切り口が多い。この物語もまた、そんな氏ならではの視点で描かれた、他には無いミステリー小説である。
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