[32]『邪魅の雫』 (京極 夏彦/講談社) 2007/10/07 [読書]
人間、誰しもが持っている邪な思い。その危うさを、非常に巧みに描いている。出てくる登場人物は、皆人間臭く、身近に「あぁ、こういう人いるな。」と思わせるような者たちばかりだ。
すべてが計画されているような、無計画であるような、連続殺人事件。過去の作品が、どちらかといえば人間の英知が意図的に生み出した事件であるのに対して、今回はどこか幼稚で場当たり的な事件を感じさせる。もちろん、最後にその全容は明らかにされるわけだが、どこかスッキリしない感が残る作品でもある。それは、事件のトリックに関してではなく、きっとその人間臭さになんだろう。
今回は本当に”人間”が主人公で、京極堂シリーズお馴染みの妖怪の存在感は薄い。きっと「邪魅」は、人間の心に棲みつき、蜃気楼のような幻影を人間に見せてしまうのだろう。
あるところ、今までのシリーズの中で一番怖い話と思えた。
はじめまして。
本作は、今までの京極堂シリーズの中で一番混乱させられました。
憑き物落しが終わったあとでも、なんとなくスッキリしていない感じです。
by じゅぴたー (2007-10-07 08:33)
>じゅぴたーさん
コメントありがとうございます。お返事遅くなって申し訳ありません。
確かに、もやっと感は残りましたね〜。それがまた新境地かなという気もしましたが。
次回作がどんなテイストになるのか楽しみです。
by nac (2007-10-20 23:03)