郊外の団地に暮らす、ありふれた4人家族の日常を描いた小説。団地、ショッピングセンター、バスなどどこにでもある現代的な風景を中心に、家族が抱える問題をそれぞれの視点から描いている。この家族は、何も包み隠さず話すという決め事をしている。一見それは守られているように見え、普通の家族では話題にあげるようなことのない話題でも食卓にのぼる。
以下、ネタバレを含みますのでご注意ください。
しかし各個人は、とうてい家族に言うことのできない(むしろ、家族にだけは知られたくないという)闇を抱えている。日常の食卓では、光のように明るく、何も隠し事はない家族と思い込んでいるのとは裏腹に。そして2人の(4人)家族外の人間(祖母、家庭教師)から見た家族の姿を映し出すことで、その姿は余計に滑稽に映る。
出来上がった当初は光り輝く場所に思えた団地も、徐々にその姿は色褪せていく。必死にそれを色褪せない姿に保とうとする母。その姿は、崩壊して行く家族を必死に繋ぎ止めようとするする姿に重なる。だが家庭教師の視点から見た家族の姿は、そんな闇を抱えていても、4人集まれば滑稽に映るくらい光り輝いている。
結局は家族というのは、そういう危うさを抱えながらも、成り立っているものなのかもしれない。
この小説にリアリティを感じるのは、劇中で"問題"が解決しないこと。様々な問題を抱えながらも、家族は続いて行くし、時間は流れて行くのだ。この物語は、その一部分を切り取ったに過ぎない。読み終わったあとに、「あれ?このあと彼らはどうなるのだろう?」と感じたあたりに、現実感を感じたのだと思う。
空中庭園 (文春文庫)
- 作者: 角田 光代
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2005/07/08
- メディア: 文庫
2011-01-24 00:36
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